エクソソーム & 培養上清

培養上清


間葉系幹細胞の治療効果の一部は、細胞から分泌される因子によることが知られています。
それらの因子を含む培養上清は、数々の疾患モデル動物を用いた薬効薬理試験により、間葉系幹細胞が対象とする適応症のほぼすべてに有効であることが示されてきました。

また、細胞では困難な凍結乾燥が可能なため、輸送や保管にもメリットが存在します。
そのような背景により、医療における培養上清へ向けられる期待は年々高まりを見ています。安全で高い効果の培養上清を大量に製造できる当社の技術は、培養上清が医療として普及するにあたり、力強く開発をサポートします。

培養上清の製造のために中空糸内腔で長期間培養されたMSC

従来の培養上清の課題

活性

従来の方法で培養上清を調製する場合、細胞を増殖する時に使用する培地に異種抗原の血清や組織抽出物を用いるため、培養上清を回収する最終ステップの培地として、単純な組成の基本培地に置き換えて、培養上清を回収する必要がありました。
しかしながら、細胞保護作用に乏しい基本培地に置かれた細胞の活性は急激に低下し、得られる細胞分泌因子の濃度も低くなることが課題でした。そのため、培養上清の回収用培地として、細胞にストレスの少ない培養技術が必要とされていました。

大量製造

従来の基本培地を用いた回収方法では、コンフルエントに培養した細胞から、2日間ほどの培養で一度だけ培養上清を回収することが限界でした。これでは、十分に製造コストを抑えることが難しくなります。抗体医薬の製造コストも当初は非常に高価でしたが、高発現の細胞株の開発や、各種センサーからのフィードバック情報を基にしたFed-Batch法による培養方法の改善などにより、今では大幅に改善されました。培養上清も、そのような技術のアップデートが可能なはずであり、重要な課題でした。

安全性

培養上清は、細胞と異なり原理的にウイルスクリアランスを製造工程に導入できる可能性があります。製造のダウンストリームでウイルスクリアランスを導入できることは、非常に大きな安心を提供します。
しかしながら、培養上清は複数の成分から構成されため、特定の成分に合わせた低pH処理や、イオンクロマトグラフィー、プロテインAカラムなど、抗体医薬などで培われた技術の多くが使用できません。また、極めて微細なフィルターによるウイルス粒子の除去法も、培養上清の重要な活性を担うとされるエクソソームも同時に除去してしまうことから、導入することができません。安全性を追求するためには、培養上清に合わせたウイルスクリアランス方法が必要とされていました。

当社の培養上清の利点

活性

細胞以外には、ヒト又は動物由来原料を一切用いない、ウイルスフリーの培地で培養上清を製造する独自技術がベースです。そのため、細胞の増殖と培養上清の回収を同一の培地で可能であり、細胞の活性が高い状態で、高濃度の細胞分泌成分を含有する培養上清を調製することができます。
また、培地由来のウイルス汚染の心配もありません。培養上清や、それを原料としたエクソソーム創薬を考えた際にも、それらは非常に重要なアドバンテージとなります。

大量製造

当社は中空糸を培養基材として用いた培養上清の大量製造技術保有しています(特許第6469287号、国際特許出願中)。本技術は、CO2インキュベーターを必要とせず、クローズドシステムで培養状況をモニタリングしながらの流加培養(Fed-Batch)法にも対応可能です。
製品開発を想定した場合、スケーラビリティーを有した原理であることもメリットです。産業化時には、数千リットルのバッチスケールにも対応できるよう、開発を継続しています。また、従来法での積層フラスコによる大量製造にも対応可能です。

安全性

さらに、培養上清の多彩な活性を保持しつつ、ウイルスクリアランスを実施できる方法を開発しました。細胞医療と比較して、培養上清は難治性疾患以外にも、今後より身近で広範な治療に活用されることが考えられます。
例えば、少量の培養上清の投与で治療が可能になると期待される鎮痛作用などはその1つです。その際に、製造工程において、アップストリームだけでなく、ダウンストリームにおいてもウイルス汚染対策を講じることは、培養上清においてはより重要な意味を持ちます。

各種疾患動物モデルにおける薬効薬理試験


各種疾患モデル動物において、当社のAOF培地で調製した培養上清の有効性を確認しました。これまでに実施した動物モデルは、認知症、炎症性腸疾患、肺線維症、アトピー性皮膚炎、急性腎障害、炎症性疼痛、悪液質などです。
いずれも疾患においても、既存薬の薬剤貢献度の低さや生命に関わる重篤な副作用の問題から、培養上清による新たな治療法に期待が寄せられます。

「アトピー性皮膚炎モデル」

自然発症アトピー性皮膚炎モデルマウスであるNC/Tndマウスに対して、当社培地で調製した脂肪組織由来MSC(AD-MSC)の培養上清を、2週間にわたり塗布しました。その結果、皮膚組織におけるマスト細胞数、および脱顆粒化マスト細胞の数が優位に減少し、アトピー症状も改善されました。

「急性腎障害モデル」

シスプラチン急性腎障害モデルマウスに対して、臍帯組織由来MSC(UC-MSC)の培養上清を尾静脈より単回投与した結果、腎臓における炎症性因子や、細胞死関連因子、および酸化ストレスの発生に関与する因子の遺伝子発現が減少し、クレアチニンレベルも改善しました。また、腎組織の空胞化変性などの病理像の改善が認められました。

「肺線維症モデル」

ブレオマイシン誘導性肺線維症マウスモデルに対して、脂肪または臍帯組織由来MSCの培養上清(AD-MSC/CMまたはUC-MSC/CM)を経気道的に投与した結果、コラーゲン量の指標であるハイドロキシプロリン量が有意に減少しました。培養上清の吸入による肺線維症の治療が期待できる結果です。

東京大学 分子予防医学教室との共同研究成果

「認知症モデル」

Olfactory bulbectomy (OBX) 認知症モデルマウスに対して、臍帯組織由来MSCまたはその培養上清(UC-MSCまたはUC-MSC/CM)を、それぞれ尾静脈および経鼻投与した結果、複数の認知薬理行動試験において、有意な認知機能の改善を認めました。アルツハイマー病に代表される認知症は、薬剤貢献度が極めて低い疾患の1つとして知られます。また、近年開発が盛んな抗Aβ抗体医薬については、患者数の多いアルツハイマー病患者への普及のためには、国の医療財政上の対策が必要となり、課題が認識されています。そのような中で、培養上清の経鼻投与は、低コストで有効な認知症治療(または予防)を提供できる可能性があります。

東北大学大学院薬学研究科との共同研究成果

非臨床安全性試験


第3者機関において、培養上清の非臨床安全性試験を実施した結果、いずれの試験においても毒性は確認されませんでした。

  • 皮内反応試験
  • 皮膚感作性試験
  • 急性全身毒性試験
  • 反復全身毒性試験
  • 皮膚一次刺激性試験
  • 抗原性試験
  • 累積皮膚刺激性試験

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