トップメッセージ

株式会社バイオミメティクスシンパシーズ 代表取締役社長
漆畑 直樹

姉をがんで亡くしたことがきっかけ。
私が香りのビジネスを始めるきっかけは、個人的な体験がベースになっています。約十年前、2番目の姉を2年半の闘病生活の末、直腸がんで亡くしました。姉の看病を続けていた私は、あるとき姉を腕に抱いたら、彼女の体臭がまるで新緑のような匂いがするのに気づきました。体臭の変化。

私は、幼少の頃重い心臓病を患い当時は成功確率の高くない手術を受け、一命をとりとめた経験があり、生来、色覚にも異常がありました。そのせいか、逆に人一倍嗅覚が敏感だったのかもしれません。「もし、がんに特有の匂いがあり、匂いでがんの早期発見が可能になるなら、姉は死ななくても済んだかもしれない」。そういう思いを強くしました。 一度は死んで助けてもらった命、どうせなら人のために生きてみたい。周囲には照れくさくて言いませんでしたが、このことを強く感じていました。

働くことで、会ったことのある人だけにではなく社会貢献ができていると実感できる仕事がしたい。いつの間にか、これが私のスタンスになっていました。

人のために、社会のために。
とはいえ、有能な技術スタッフとの出会いがなければ、私の想いを現実に移すことはできません。私の小さな会社に可能性を感じて、まだ海のものとも山のものとも分からない香りビジネスの世界に身を投じてくれた多くのスタッフに感謝しなければならないでしょう。

初めて世に送り出したのは、聴覚障害者向けに携帯電話メール着信を知らせる「レモン香りストラップ」です。キャラクター付きストラップやアイドルグループのコンサートグッズ等々を商品化し、大きな成功を収めました。しかし、私は、その事業に飽きたらず、もっと大きな世界をめざしていました。

環境改善、医療、セキュリティといった分野で、さらに役に立つ製品をつくり、社会貢献をめざしていきたいと考えてきました。

MOT(技術経営)へのこだわり。
私が経営の中心に置いているのは、MOT(技術経営)です。MOTの原点は、アメリカのアポロ計画で、巨大プロジェクトを成功に導くために技術のマネジメントを考えたのが始まりとされています。
私は、資金も脆弱で、人材も十分でないベンチャー企業が大きな夢を実現するためにはMOTを取り入れるのが最善であると考えました。いくら優れたアイデアや技術を持っていても、製品やサービスが市場に受け入れられなければ意味がありません。しかも、タイミングよく世に送り込み、ユーザーに納得できる価格で提供するには、こなれた生産技術や設備が不可欠です。

なにがなんでも自分たちでやることを標榜すれば、私たちの未来に待ち受けているのはおそらく「死の谷」でしょう。

「海兵隊式経営」と「ファブレス企業」を両輪に。
ベンチャー創業者が必ず陥る「死の谷」をいかに克服するか。私は、そこで「現場で判断できる権限を与える」「目標は指示するが、やり方は指示しない」という「海兵隊式経営」を取り入れ、さらに自社では極力設備を持たず、外部の協力会社に生産委託する「ファブレス企業」の道を選択しました。

研究開発では、内外の大学や企業の研究機関との共同で数多くのプロジェクトを進めています。技術を唯一の経営資源として最大限に活用するMOTにおいて、技術のシーズから研究開発へ、研究開発から製品化へとつなげ、事業を産業へと拡大していくには「海兵隊式経営」と「ファブレス企業」の両輪が不可欠であると確信しています。当社のヒット商品はこうした経営戦略の成果であると受け止めています。

未知なる香りドメインへのチャレンジ。
医学の専門家によれば、人間の遺伝子は2~3万個あると言われ、その中で視覚についての遺伝子は3個、味覚については5個であるのに対し、嗅覚についての遺伝子は500~700個もあることが判明しています(高田明和 浜松医科大学名誉教授)。つまり、匂いに関する遺伝子が全体の2%を占めていることは、嗅覚が人間にとっていかに重要かということです。

視る・聴く・触る・嗅ぐ・味わうの五感のうち、映像や音楽については、たいへん研究が進んでいます。ところが、嗅覚はデジタル情報化が遅れています。姉の一件があったとき、国内だけでなく、海外の論文を読みあさり、世界中の専門家を訪ね歩きました。その結果、日本の研究は遅れていますが、世界的にはたいへん注目を集めている分野であることが分かりました。

Biomimeticsという学術分野があることを知ったのもそうした紆余曲折の中ですし、現在も続いている人脈や研究ネットワークは、その当時に得た、かけがえのない姉の“遺香”です。

CSRに基づいた「表裏一体」経営。
私たちは、これまで香りの長期保存や天然香料の抽出など、他の追随を許さぬ独自技術を確立しています。しかし、全体からみれば、まだまだ端緒についたばかり。第一コーナーのほんの始まりにすぎません。

私がこのビジネスに取り組んでから、がんに特有の匂いがあることが科学的に明らかになりました。もし、この匂いを数値化できれば、体臭の変化を感知することができ、がんの早期発見につながるはずです。 多くのがんは早期発見・早期治療によって完治する可能性を持った疾患です。ところが、検査を避けたり、遅らせているうちに、手遅れになってしまうことが多いのです。特に女性の場合は、その傾向が強いようです。匂いでがんを発見することができるようになれば、そうした人々にとっても、救いの手を差し伸べることになるはずです。

当社では、「乳がんの早期発見、早期診断、早期治療」の重要性を訴える「ピンクリボン運動」に協賛し、さまざまなイベントに参加しています。昨今、日本の産業界でコンプライアンスが声高に叫ばれていますが、当社にとって、CSRは創業以来の理念の一つであり、今後も「表裏一体」の真摯な経営を貫いていきたいと考えています。

BioMimetics Sympathiesという生命体の誕生。
バイオミメティクス(生体模倣技術)とは、生体のもつ優れた機能や構造、製造プロセスから着想を得て技術開発に活かすものでございますが、弊社の創業以来の研究開発活動は、まさに生体模倣技術によるものであります。
今後においても生体模倣技術を医療分野と共鳴(シンパシー:SYMPATHIES)させる研究開発体制で取り組むというメッセージを込めた社名です。バイオミメティクスシンパシーズは、与えられた名前の最終局面に入ってきました。

人の命の近くで、役に立つ。そんな、社会貢献直結の企業として再生医療に経営資源を集中し始めました。
あまりにもくすしく精巧に作られた人体の中で、生命の維持と深く関係する幹細胞を、安全にお薬にする。
より迅速に、より身近に。 只今からのバイオミメティクスシンパシーズにぜひご期待下さい。